ローボールテクニックとは?
ローボールテクニックとは最初に好条件だけを提案して、相手の承諾を得た後に、相手にとって都合の悪い条件を付け加えたり、先に提示した好条件の一部を取り除いたりする手法のことです。
例えば、「飲み放題、1,000円」という看板につられて、店に入って着座した後で、「お一人様、3品以上、注文してください。ビールは対象外です。お通し料、サービス料が追加でかかります」と説明された経験はありませんか?
だからといって、着座した後に「他のお店にします」とは、なかなか言い出せません。
これは典型的なローボールテクニックです。
ローボールテクニックの名称は、条件や要求をボールにたとえ、「受け取りやすい低いボールから投げること」に由来しています。
ローボールテクニックは、心理学の「一貫性の法則」を利用したものです。
一貫性の法則とは、自らの行動や発言、態度などに対して一貫したものとしたいという心理のことです。
【参考】その他の「一貫性の法則」を利用した交渉術「フットインザドア」「イエスセット」
ローボールテクニックの具体例
職場
上司から
「ちょっと手伝ってほしいのだけれども。今、時間あるかな?」と聞かれたので、
「はい。時間あるので手伝います」と快諾。
「ありがとう」と感謝されたが、
上司が持ってきた仕事が、今日中に終わるような仕事量ではない。
しかし、「手伝います」と言ってしまった手前、断ることができず、残業をして手伝うことになる。
会員制
「無料で会員登録できます!会員様は特別価格で、ご購入して頂けます」
無料だからと会員登録したところ、特別価格は有料プランにも加入しないといけないと説明を受け、断れずに有料プランにも加入してしまった。
買い物
「店内商品70%オフ」という貼り紙に引かれてショップに入る。
良いものがあったので、レジに商品を持って行ったところ「こちらの商品は割引対象外です。よろしいですか?」と言われてしまう。
レジまで持っていった手前、断りにくく、定価で商品を購入した。
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当日になって
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ローボールテクニックの対処法
反対に、ローボールテクニックを使用されたときは、どのように対処すればよいでしょうか。
ローボールテクニックを知っておく
ローボールテクニックという交渉術があることを頭に入れておくことです。
交渉の場で条件を提示されたら、「他に何か条件はありませんか?」と必ず確認するようにします。
そして、好条件が後から取り除かれたり、面倒な条件が後から追加されたりした場合は、「相手はローボールテクニックを使っている」と認識しましょう。
このときに、いったん冷静になって、このまま交渉を進めるのか、断るのかを落ち着いて考えてください。
罪悪感を抱かない
ローボールテクニックを使用する人は、相手に不信感を抱かせる危険性があることを認識しています。
したがって、交渉相手の不信感を少しでも払拭するために
「申し訳ございません。お伝えし忘れていたのですが、このような条件もございまして…」
「申し訳ございません。お客様はこちらの割引対象外でございまして、私の確認不足でございます…」
「きちんと謝罪する」という対応は、誠意があるように思われます。
しかし、相手は「謝罪を受け入れなければ、自分が狭量な人間であるように感じる」という人間の罪悪感を利用して、承諾させようとしている可能性があります。
交渉を打ち切ることに、罪悪感を感じる必要は全くありません。
ダメなものはダメと、はっきりと伝えましょう。
ローボールテクニックを使うときの注意
ローボールテクニックは
- 相手にとって受け入れやすい(あるいは得になる)条件を提示する
- 取引の承諾後、その条件を除去する
という簡潔なプロセスで実行する事ができる上、非常に「強力」な技法ですので、ビジネスや恋愛に限らず日常のあらゆる場面で活用する事ができます。
しかし、ローボールテクニックは、「相手にとって都合の悪い条件を意図的に隠しておく事」が前提になりますので、使い方によっては「騙された」と感じる人が出てきます。
その時に、十分にフォローすることを忘れないようにしましょう。
本日のまとめ
ローボールテクニックとは
・相手にとって受け入れやすい(あるいは得になる)条件を提示する
・取引の承諾後、その条件を除去する。悪い条件を追加する。
手法のことである。
ローボールテクニックはビジネスからプライベートまで、さまざまなシーンで使うことができる。
反面、相手にとって悪い条件を隠しておくため、相手は騙されたという印象を受ける可能性がある。
フォローを忘れずに。