人の行動や考えを改めてもらいたいとき、注意や命令をするのではなく、相手に「期待をしている」ことを伝えると効果的です。
「こうしろ、こうするべきだ」という伝え方は、相手のためを思って言っていたとしても、言われた側は「そんなことを言われたくない」と反発心を抱くことがあります。
人は期待をかけられると、その期待に応えようと、自ら考え行動を起こします。このことをピグマリオン効果と呼んでいます。
ピグマリオン効果とは?
ピグマリオン効果とは、他者からの期待を受けることで学習や作業なのどの成果を向上させることができるといったものです。
アメリカの心理学者ローゼンタールが、教師からの期待があるかないかによって、生徒の学習成績が左右するという実験結果を報告しました。
先生から期待された生徒と期待をされなかった生徒の成績を比較したところ、期待された生徒の方の成績が向上したという結果になりました。
ピクマリオン効果を部下のマネジメントに応用すると、
上司が部下に対して期待をかけると、次の①~⑤の順で効果があらわれます。
①部下は上司の期待に応えようとする。
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②部下は自分自身で考え、行動を起こすようになる。
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③部下の行動によって、上司への連絡、相談が増える。
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④上司は部下の面倒をより一層見ようとする。
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⑤結果、部下の成績がアップする
といった効果が期待できます。
期待のかけ方
裁量を与える
期待をしていると言いつつ、実際には、あれこれ指示を出していては、本当に部下を信用して任せているとは言えません。
期待していることを言葉にして伝える
単に「期待している」と言うだけでなく、「君ならできる」「安心しているよ」といった励ましや、信頼の言葉を伝えます。
過剰な期待をしない
過剰に期待することで「自分には、その期待に応えられない」というマイナスな感情を引き起こしてしまうからです。
期待をかける会話例
最近、仕事ぶりが雑になってきた部下に対して
(悪い例)
「君の仕事ぶりだけど、はっきり言って、雑だよ!前に比べて、全然、なってない。こんなことでは、続けてもらうわけにはいかない。」
このように、感情的な言い方をされたら、部下は反感を持つだけです。
(良い例)
「君は優秀な職人だ。君の立派な仕事ぶりを、大勢のお客さんがほめている。君はできるのだから、昔を思い出してくれたら、以前のように、良い成果がでるよ」
「優秀」「君はできる」「良い成果がでるよ」といった前向きな言い方で期待を持たせます。
悪い例のように、文句を言うだけなら、誰でも出来ます。
相手に寄り添い、希望をもたせる言い方ができる人に、人は引き込まれます。
仕事が遅い人に対して
(悪い例)
「もっと、早くならないかな。時間が無いんだよね。遅れると、他の人にも迷惑がかかるよ」
早くしろと指摘されたからといって、人はすぐに変われるものではありません。
遅れていることは、本人もよくわかっていて、申し訳ない気持ちは持っています。
(良い例)
「ひとつひとつの仕事に、丁寧に取り組んでくれているね。ミスが少ないから、安心だよ。できたら、もう少しだけスピードを上げてもらえたら…」
相手は、本当に言いたいことは急げということなのだと察してくれます。これでしばらく様子をみるのが、良い方法です。
相手の出来ていないことをストレートに突くのではなく、相手の「察する能力」に期待しておだやかな言い方をします。
※【参考記事】部下をやる気にさせるベストな褒め方について解説しています。
・【参考記事】人を動かす質問について解説しています。
本日のポイント
ピグマリオン効果
ピグマリオン効果とは、人は、他者からの期待を受けることで学習や作業なのどの成果を向上させることができるといったもの。
期待のかけ方
・裁量を与える
・期待していることを言葉にして伝える
・過剰な期待はしない
「期待をかける」ことで、相手の自尊心が傷つかず、期待に応えたいという気持ちが起こります。
期待されているから、頑張ろうという気にさせることがポイントです。