「君は〇〇さんに比べて成長していないな。〇〇さん、あっという間に君を追い越してしまったよ」
このように、誰かを鼓舞しようというとき、注意を促そうというとき、教訓めいたことをいおうとするとき、「誰かと比較して」という話し方をする人が少なからずいます。
そのような人に限って、「あなたこそ、△△さんに比べたら…」と、他人と比べられると腹を立てます。自分が言われて嫌なことは、言わないというのは話し方の鉄則です。
人は誰しも、人を引き合いに出されて、批判めいた話をされることを嫌います。
引き合いに出す話し方をする人の心理
刺激したい
引き合いに出す人は、心理的に相手の気持ちを刺激したい願望があります。
例えば、職場で上司が部下に対して
「今月、君と同期の〇〇君は、もうすでに契約が3件とれてるけどな」
このように言われた部下は
「今月はまだ、契約がゼロだぞ」
とストレートに言われるよりも不快な気持ちになります。
上司は、部下が不快な気持ちになることを分かっていて、わざと刺激するために言っているのです。
モチベーションを高めてほしいという思いから言っていることが多いです。
特別な思いがある
例えば、
「A子の彼氏は、記念日には必ずプレゼントを買ってきてくれるらしいよ」
と友人の恋人の名前を出す人がいます。
彼氏からすると、他人と自分は違うから、比較してほしくないと思うでしょう。
こういう場合は引き合いに出す対象の人に、特別な思いを抱いている可能性があります。
友人の恋人が羨ましいため、つい本音が出てしまうのです。
あまりにも引き合いとして使われることが多い人は、普段からその人のことを考えていることがあります。
自己表現が苦手
「君はダメだなあ」といってから、「〇〇さんを見てごらんよ」と比較して、「だから、あなたもあの人を見習いなさい」と結論をつける…
このように、型にはまった話し方でしか表現できない人がいます。
このタイプの人は「どうすれば能力を伸ばしてくれるだろう」「どうすれば反省をして、行いを改めてくれるのかしら」と考えたり悩んだりすることが苦手です。
そのため、「誰かと比較する」という安直な表現をしているのです。
相手を傷つけずに比較する話し方
相対的な評価をする
部下を鼓舞するとき
✕「〇〇さんに比べて、成績が劣っている。だから頑張れ」
〇「このチームの中では、数字が遅れている。だから頑張ろう」
〇〇さんといった特定の個人を引き合いにするのではなく、「~の中では」「みんなと比べて~」といった話し方をします。
これは、相手の「傷つき度」を小さくする話し方です。相手も冷静に受け止められるでしょう。
「比べて叱る」ときだけでなく、「比べてほめる」ときも、この言い回しは効果的です。
✕「宴会の幹事役には、君が一番だ。司会がうまいし、弁が立つ。〇〇君や△△君には無理だしなぁ」。
〇「宴会の幹事役を任せるなら、営業部の中では君が一番だな。司会はうまいし、弁が立つからみんなを盛り上げるのも達者だ」
比べてほめられるのであれば、相手は意気に感じてやる気も増します。
ただし、これも特定の人と比べるのではなく、「~の中では」「みんなと比べて~」といった話し方をします。
引き合いに出された特定化された人が聞いたら、傷つくことになるからです。
叱るときもほめるときも、このように「特定化を避けた話し方」が効果的です。
個人内評価による比べ方
「鼓舞するとき」
✕「〇〇さんと比べて、君は成長していないな」
〇「最近の君は、あまり成長が見られないなぁ。去年のほうが生き生きとしていた」
「ほめるとき」
✕「〇〇君は全然、成長しないけど、君は最近、よく成長したよ」
〇「昨年の君に比べて、ずいぶん成長したものだね。隠れたところで努力を積み重ねていたんだね」
このように「他人と比較する」のではなく、その人の過去と比較をします。
この「個人内評価による比べ方」のほうが、相手は気持ちが鼓舞され、素直に反省もできるのではないでしょうか。
本人が「自分自身を見つめる」ために有効な話し方です。
※職場で部下をやる気にさせるベストな褒め方については、こちらの記事で解説していますので、ぜひ参考にしてください。
※上手な褒め方と下手な褒め方について、詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
本日のまとめ
引き合いに出す人の心理
・刺激したい
・特別な思いがある
・自己表現が苦手
「心に響く」比較する話し方
・相対的な評価をする
・個人内評価による比べ方